研究概要 |
本年度はアイソレーターと熱転写プリンターを講入し、それぞれ実験,解析装置の一部として使用した。主として下記二項の検討をおこなった。1.【NF_2】ラジカルのg値の決定.60年度に高磁場磁気二重共鳴スペクトルから決定したg値はゼロ磁場定数にマイクロ波分光による値を用いて得られたものであり、特に回転g値は用いたスピン回転定数の値に依存して決定された。そこで【ν_3】bandの低磁場LMR吸収を用いたマイクロ波二重共鳴スペクトルを観測し、これを高磁場二重共鳴スペクトルと合わせてg値と共にスピン回転定数をparameterとして最小自乗bitをおこなった。こうして得られた電子スピンg値は60年度に決定されたものと同じであり、回転g値もほぼ同じと判断されるが、後者についてはなお詳しい検討をおこなっている。2.Cl原子のレーザーマイクロ波磁気二重共鳴スペクトルの検討.二重共鳴セルに加えた9【GH_2】マイクロ波により、気相【Cl_2】を放電してCl原子を生成すると共にマイクロ波二重共鳴スペクトルを生ずる新たな方法を見出して、Cl原子の磁気二重共鳴スペクトルの検討をおこなった。LMRとして【^2P_(1/2)】←【^2P_(3/2)】の微細構造間の遷移を用いて、基底【^2P_(3/2)】ゼーマン準位間のマイクロ波二重共鳴スペクトルを観測した。これら二重共鳴スペクトルの解析から磁場分布がスペクトル線に与える影響が明らかになり、逆にゼーマンスペクトルに対する磁場補正を正確におこなう方法が得られた。また磁場補正量は高々0.4Gであることも明らかになった。この方法により正確に磁場を決定したCl原子のLambdipLMRスペクトルから【^2P_(1/2)】-【^2P_(3/2)】微細構造分裂が882.352935(67)【cm^(-1)】(35Cl)および882.353786(67)【cm^(-1)】(37Cl)と決定された。付随する誤差は実際には磁場補正量より大きいlaser instabilityにより支配されているが、上記微細構造定数は磁場測定に伴なう誤差が十分小さいことが保証された値となっている。
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