研究概要 |
これまで合成された化合物の中で、アミノ化合物は酸の添加により塩を形成し、この化合物の配座平衡に特異的な作用をおよぼした。このことは塩を形成することにより、NH…Π相互作用の存在を示唆している。本年度は特にこの点に着目して本研究の推考を深めた。すなわち、フルオレン環に環の電子密度を変化させる置換基(電子吸引基としてBr,電子供与基としてOC【H_3】,C【H_3】)を導入した化合物をあらたに合成し、また添加する酸の強度を変えてNH…Π相互作用への影響をしらべた。 9-(2-ジメチルアミノフェニル)フルオレン(【1!〜】)はクロロホルム中平衡定数ap/sp=1/12で存在している。【1!〜】のクロロホルム溶液にC【F_3】COOHを添加していくと【1!〜】-saltを形成するがC【F_3】COOHの増加とともに安定配座の逆転が生じ、ついにap/sp=11/1となった。このことは【1!〜】ap-saltにおいて分子内NH…Π相互作用がap体を安定化したものと推察した。 N-H…Π相互作用におよぼすフルオレン環のΠ電子密度の影響を検討するために、フルオレン環の2-あるいは2.7-位にBr,OC【H_3】,C【H_3】を導入した化合物を合成し、それぞれの化合物においてクロロホルム中C【F_3】COOHの添加量とap体の存在率の関係をしらべた。その結果フルオレン環のΠ電子密度が増化するに従いC【F_3】COOHの少ない添加で平衡なap体へ傾むいていくことが判明した。すなわちNH…Π相互作用が強められたことを示している。C【F_3】COOHのかわりに用いたC【F_3】COODの各添加量におけるap≒sp系でDNMR測定を行い室温における熱力学的パラメーターを算出した。塩を形成した時のΔG≠の差はほぼ1kcal/molと見積られた。 次に、添加する酸を強い酸C【F_3】S【O_3】Hへ変えると【1!〜】-saltのN-H…Π相互作用が強まることが明らかとなった。
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