研究概要 |
前年度において無水酢酸-無水トリフロロ酢酸-酢酸混合溶媒(以下ATA溶媒と略す)を用いる加溶媒反応がポリアセトキシトロポン(AcO)nTrp(n=2〜6)の新しい合成法として有用であることと、その適用限界を明らかにした。更に、この方法はアルキル置換体についても適用できるが、副反応が伴うことが判った。この様にして合成した(AcO)nTrpについて、アセトトロピー現象を系統的に調べ、その反応機構が従来の主張と異なる協奏的な〔1,9〕シグマトロピーで進むことを見出した。61年度はこのアセトトロピー現象に対する溶媒効果を調べ、〔1,9〕シグマトロピー機構が正しいことを証明した。 この様に、トロポロン核上のアセチル基が容易に七員環上を移動できることは、(AcO)nTrpから七員環オキソカーボンの最もよい前駆体と考えられるポリヒドロキシトロポン(HO)nTrp(n=2〜6)へ容易に誘導できることになる。事実、【(HO)_6】Trpを除く(HO)nTrpの合成は好収率で達成した。 以上述べた合成研究と並行して、(HO)nTrpの酸化条件を探る基礎的な研究として、七員環キノン及びそのハイドロキノン体の電気化学的な挙動について検討した。更に、置換基を持つ七員環キノンを合成し、酸化環元電位に対する置換基の影響を調べた。その結果、置換基によっては酸化環元サイクルから異化学種になる過程が併発することが判った。この様な電気化学的挙動を正確に把握するため電解反応を行い、生成物を単離・構造決定した。
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