研究概要 |
1)アニサチンの合成:アニサチンの合成ルートを検討するため, まずモデル合成を行った. アニサチンに含まれる最も特徴的なβ-ラクトンをもつ部分構造として5-ヒドロキシー5-メチルー2-オキサスピロ〔3.5〕ノナンの効率的合成ルートを確立した. この合成に関連したオキセタンの還元開裂反応も検討し, 隣接水産基の関与がオキセタンの位置選択的還元を容易に起こすことを見出した. さらにアニサチンの有力合成原料とみなされる6-オキソー1-シクロヘキセンカルボン酸の簡易合成法を見出した. 2)コリアミルチンの合成:この合成では当研究室で開発したβ-ビニルブテノリドアヌレーション法を適用する計画であるため, 必要なγ-メチルーα-フェニルチオーβ-ビニルブテノリドの新しい合成法について検討し, 新合成法を開発することができた. 3)ピクロトキサノイドの合成:l-カルボンから出発したピクロトキシニンの合成を行い, 約30段階を経てピクロトキシニンを良い全収率と高い選択性をもって完成した. さらにピクロトキシニンからピクロチンへの変換についても検討し, 既知方法よりも遥かに効率の良いルートを開発した. ピクロトキシニンの合成に関連して, α, β-エポキシケトンおよびα, β-エポキシエステルの還元によるβ-ヒドロキシケトン(またはエステル)の合成法としてナトリウムベンゼンセレノレートが極めて優れた試薬でありことを見出し, 一般的に適用できることを証明した. この反応の応用として若干のセリナン型セスキテルペンラクトンを合成した. またこの反応の活性種についても研究したがNa[C_6H_5SeB(OC_2H_5)_3]であることを確認した.
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