研究概要 |
難溶性炭酸塩中のFをイオンクロマトグラフ法で定量するための前処理として、塩酸による溶解とH型強酸性陽イオン交換樹脂による溶解を比較した。前者は迅速であるが、大過剰の【Cl^-】共存下で微量の【F^-】を定量することになり、下の少ない炭酸塩には適用できない。イオン交換樹脂による方法は数hのかきまぜが必要であるが、方解石、プロトドロマイトは完全に溶解でき、しかもこれらの鉱物中の【Cl^-】も同時に定量できる利点がある。この方法で100mgの炭酸塩中のppmレベルのFの定量が可能である。 この分析法を利用して、水溶液と方解石との間の【F^-】の分配を研究した。少量の【F^-】を含むCa【Cl_2】溶液に常温で【Na_2】【CO_3】溶液を加え、【F^-】を含む方解石を合成した。【F^-】の分配平衡が成立するのに15℃で300h以上を要した。アラレ石の場合と同様に、方解石中の1個の【CO(-3^(2-))】が2個の【F^-】によって置換されることが確かめられた。このとき[F]/【a_F】【a(-(Ca)^(0.5))】は定数となる。ここで[F]は固相中のF濃度(mol/g),【a_F】,【a_(Ca)】は溶液中の【F^-】,【Ca^(2+)】の活量である15℃におけるこの値は10であった。アラレ石ではこの値が89であったことから、方解石よりもアラレ石に下が取りこまれ易いことが結論された。 この結果を利用して、温泉水から生成した方解石型石灰華のF含量を説明した。温泉水は多くの場合、方解石について過飽和であることから、[F]/【a_F】【a(^(0.5)-(Ca))】よりも[F]【a(^(0.5)-(CO-3))】/【a_F】が定数となることを示した。[F]/【a_F】【a(-(Ca)^(0.5))】の実測値に方解石の溶解度積を代入して整理すると、[F]【a(^(0.5)-(CO-3))】/【a_】として15℃で1×【10^(-3)】の値を得た。温泉水と石灰華の分析値から計算したこの定数は0.4〜3.0×【10^(-3)】の範囲にあった。温度の効果、pH測定の不正確さを考慮すれば石灰華中の下はイオン交換機構による分配によってよく説明された。Mgに富で石灰華が比較的Fを濃縮していることから、方解石によるFの取りこみが陽イオン種にも影響を受けると考えた。
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