ヘテロポリ酸の生成反応は、分析化学の分野では、約100年前からケイ素や隣および砒素等の分析に利用されており、現在でもこれらの元素の化学分析に用いる反応としては最良のものである。本研究では、このヘテロポリ酸を無機試薬として他の元素の分析にも広く使用できるように新しい分野を開拓することを目的としたものである。特に本研究ではTi(【IV】)、Zr(【IV】)、Hf(【IV】)、Th(【IV】)、Ce(【IV】)、【V】(【V】)、Nb(【V】)、Ta(【V】)等の第4A族および第5A族元素が定量的にヘテロポリ酸の一つであるモリブドリン酸と反応し、水溶性の安定な多核三元ヘテロポリ酸錯体をつくることを発見して以来、主にこの反応の分析化学的応用に力を入れて来た。すなわちその生成反応を明らかにすると共に、水溶液中の構造の変化をラマン分光法および拡張X線吸収微細構造分析法によって研究し、電子状態の変化を核磁気共鳴吸収法によって解明し、生成に関する経験則を樹立することに成功した。又、これら三元ヘテロポリ酸の溶存状態と各種の溶媒との相互作用についての溶媒パラメーターと溶媒抽出因子を解明し、これによってこれら重金属元素の同時分析法ならびに分離分析法の新しい方法論が確立された。
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