研究概要 |
本研究の目的は、電極界面の光反射法に磁場印加時の計測を併用し、これを電極界面の磁気旋光分光法として確立し、電極界面化学種の新しい状態分析法とすることである。その特色は、電解経過中の電極に磁場を印加し、その効果で誘起される界面化学種の光学的性質の変化(いわゆるファラデー効果)をその場で捉える点にある。 60年度には磁気旋光スペクトル測定装置の作製を行った。装置は、光学系磁場系および電気化学系を含み、以下の(1)〜(6)の部分から構成される。(1)マグネットおよび試料ホルダー,(2)偏光子および検光子,(3)光検出器,(4)測定セル室,(5)光源,(6)定電位電解装置。 61年度には、60年度に作製の磁気旋光スペクトル測定装置を用いて、スペクトルの測定法を検討し、特に炭素電極を用いる電解系について適用を試みた。カーボンクロスの光透過性薄層電極を用いて無機化合物として硫酸ニッケルおよび塩化コバルト,有機化合物としてクロルプロマジン(CPZ)の電解を行った。そして電解経過中に生ずる電極界面化学種の磁気旋光スペクトルを観測した。 Ni【SO_4】溶液あるいはCo【Cl_2】溶液を定電位電解したとき、磁場印加の有無による旋光スペクトルの変化が認められた。しかしその大きさは電位に依存する。CPZを電解しながら磁気旋光スペクトルを得たところ、0.6Vでは電極界面の化学種は【CPZ^+】であり、その旋光性は磁場印加により変化する。一方、OVにおける化学種はCPZであり、磁場の有無によらず旋光性は見られない。このことは、本方法が有機電極反応中間体の磁気的性質の検討に利用できることを示唆している。 本研究では、本方法により電解酸化還元により生じた電極界面化学種の磁気旋光変化を捉えることに成功した。
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