前年度は高圧HNMR法により種々のオキソバナジウム(1V)錯体、VOL_5ここでL=dmso(ジメチルスルホキシド)、dma(N、N>アセトアミド)、dmf(N、N-ジメチルホルムアミド)、CH_3CN、における配位子交換反応を常圧から2000MPaまでの圧力下で測定し、log(kobs)と圧力の関係から活性化体積ΔV^≠としてそれぞれ-13.1±0.2、-9.9±0.1、-6.7±0.6、-0.4±0.3cm^3/molを決定することができた。ΔV^≠の値が負であることから、これらの反応が会合的であることが予想できるが、配位子の塩基性が強い(ドナー数が大きい)程ΔV^≠は負の大きな値となり、反応機構はA(会合機構)またはIaであると結論することができた。最終年度は、最初に^<13>C、^<17>O専用高圧NMRプローブを完成させ、次に高圧^<17>ONMR法により、VO_2(H_2O)^<2+>_5におけるH^2O交換反応の圧依存性(0〜2000MPa)を調べ、ΔV^≠=0.3cm^3/molを得た。ΔV^≠の値が僅かに正であることから、水交換反応の機構が会合的でないことは明らかである。前年度の研究で、ΔV^≠は配位子の塩基性の強さと良い相関性があることが示されたが、水のドナー数はdmfとCH_3CNの中間にあり、水交換におけるΔV^≠は-0.4〜-6.7cm^3/molと予想された。しかしながら、実験値ΔV┫D1≠┫D1=0.3m^3/molは予想値よりも大きい。このことは以下のいずれかの理由によって説明される。(1)水の部分モル体積が有機溶媒に比較して小さく、反応に伴なう体積変化も相対的に小さい。(2)VO(H^2O)^<2+>_5では軸方向と赤道面の間で配位子交換が起り、大きな体積変化を伴なわない。また、VO(ox)^<2->_2におけるシュウ酸交換反応の圧依存性については、現在研究が進行中である。ウラン及びトリウム錯体の配位子置換反応については、常圧下の研究では成果を得ており、今後は高圧下の研究を進めていく予定である。
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