研究概要 |
1.dー酒石酸イオンによる錯体のキラル識別に関して【〔CO(en)_3〕^(3+)】及び関連錯体の【C_3】軸方向における水素結合によるface-to-faceの会合モードが決定的に重要な役割を演じていることをX線結晶解析,CDスペクトル,クロマトグラフィーの実験によって明らかにした。 2.吐酒石イオンによる錯体のキラル識別に関して提唱した概念的なL-Jモデルを発展させ、【C_3】,【C_2】軸の方向からの水素結合型イオン会合モデルを想定し、会合の方向を【C_3】軸のみ,【C_2】軸のみに規制した錯体や【C_3】軸,【C_2】軸ともに会合可能な錯体についてクロマトグラフィーによる光学分割を行ない、【C_3】会合,【C_2】会合のモードを明瞭に視覚化することに成功した。 3.錯体間の水素結合に基づくイオン会合を利用して光学活性な錯体を分割剤とするクロマトグラフィーによる錯体の光学分割を試み、特定の錯体を効率良く分割する分割剤の開発に対する指針を得ることができた。 4.吐酒石イオン及びその誘導体イオンを含むジアステレオマー塩の結晶解析を行ない、吐酒石イオンがΛ型の【〔CO(en)_3〕^(3+)】や【〔CO(gly)(en)_2〕^(2+)】の【C_3】軸または擬【C_】3軸方向から接近して三重の水素結合を形成することを見出した。これは溶液中における吐酒石イオンのキラル識別機構に対して2で述べた我々のモデルを支持するものである。 5.自然分晶することの知られているK〔CO(edta)〕 【H_2】Oに注目し、対イオンをLi,Na,【NH_4】,Rb,CsまたはMg,Ca,Sr,Baと変えて自然分晶の有無を確かめるとともに結晶解析によつて自然分晶する結晶に共通するパッキングモードを見出した。 6.ウェルナー型錯体とは異質な無電荷の有機金属錯体のクロマトグラフィーによる光学分割を試み、〔CpFe(CO){P(OMe)【Ph_2】}{P(O)【Ph_2】}〕を試料として光学分割の最適条件を分割剤の種類を変え、溶媒の種類を変え、誘起CDスペクトルやTLCを手掛りとして探索することにより、かなり良い効率で分割することに成功した。
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