研究概要 |
今年度は、主として高温熱量計の製作を主体として、他にフッ素含有非晶質シリカの高温高圧処理、およびホウ酸塩とケイ酸塩融体の電気化学測定を行なった。 (1)高温熱量計は、年度初めより設計と製作にとりかかり、2月末において1ジュール程度の熱量を10%以下の精度で測定可能な本体がほぼ完成した。この段階において、その性能は市販の熱量計と比肩しうるものになった。これにより、酸化物系の熱量測定が有意な精度で行なえる見通しである。さらに、熱量計内と熱量計の設置されている部屋の温度制御を付加することにより、さらに高精度化できる可能性が残されている。 (2)フッ素含有シリカゲルの、高温高圧下でガラス化の試みにより、結晶化させずに、高フッ素含有シリカガラスの合成が可能となった。 (3)酸化物融体の電気化学測定において、少量添加の酸化鉛が融体の酸/塩基度を調べるための良い指標となることが、実験とシミュレーションから示された。これを利用して、ナトリウムのケイ酸塩とホウ酸塩の塩基度が求められ、他の測定法と良い一致をみた。 これらの成果を基に、次年度は揮発性成分を含むものと、含まないものについて酸化物融体とガラスの熱力学的研究を、実験と理論の両面において行なう。すなわち、融体そのもの、あるいはそれに近い状態での熱測定を広範囲の組成のケイ酸塩とホウ酸塩について行ない、さらには水等の揮発性成分を含んだものについての測定も行なう。後者については、測定手法に相当の工夫を要する。これらの測定結果を整理するために、酸・塩基,混合熱などについての理論的取扱いの見直しを行なう。
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