研究概要 |
酸化物溶融体は, 金属精錬上重要であるのみならずセラミックス材料の原料であり, 溶岩に見られるマグマとして地球科学的にも重要である. 熱力学的手法ばかりでなく各種スペクトル法を広く援用してその構造・物性を明らかにして来たが, この研究では高温熱量計を自作し, 直接溶融した状態で反応熱, 溶解熱等を測定しようとした. 水蒸気等気体を含む系を取扱うことを考えて当初高圧容器を熱量系に持込むことをめざしたが費用の関係で断念し高圧水熱合成装置と高温熱量計を整えた. 今後, 気相制御装置次いで高圧試料容器を導入する予定である. 熱量計は, 双子型恒温壁熱量計で, 直径26cm高さ27cmのSUS310S耐熱ステンレス鋼を均熱体とし, その中に二つの穴をうがって納めた熱量計セルは均熱体と112対のプラチネル熱電対で結んで温度差を検出していて750°Cにおいて1Jの熱を5%以下の誤差で検出できる. 扱った系は二つある. (1)シリカアルミナ非晶質体の熱含量測定の石英やα-アルミナを2PbO・B_2O_3融体に溶かす研究はすでによく知られているので, 高温材料として興味ある非晶質混合酸化物であるシリカアルミナを溶解し, 過剰の熱含量からこの非晶質中の化学結合を検討した. その結果, 熱処理温度800°Cと1000°Cでは共に非晶質であっても熱含量に大きな差が見出され, Al原子間の周りのO原子数に差があることが推論された. (2)炭酸ソーダ・無水ほう酸系の混合熱測定. B_2O_3の高い組成ではNa2CO3は定量的に分解してCO_2を発生するが, この際の反応熱を測定した. 粘性の高い溶融体ではCO_2の発生がスムーズに進行せず, 再現性のよいデータは得られていないが水蒸気を含む系のモデルとして追究している. 平行して電気化学的な平衡測定, 水熱合成装置によるフッ化物を含む非晶質, シリカアルミナの高圧結晶化を行い, 分子動力学, 量子力学計算による溶融体の構造研究を行っていづれも成果を得ている.
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