研究概要 |
1.目的.金属イオンあるいは金属錯体に選択透過性を持つ圧透析膜を開発し、用途開発を図る。 2.研究方法.金属イオン種を選択的に透過させるためには、まず金属イオン種が膜に選択的に収着される必要がある。本研究では高分子膜を有機溶媒に見立て、これにイオン対抽出に類似した反応で収着される金属錯体に注目し、収着と透過の挙動を比較検討する。一方、イオン性化合物の膜への収着機構として、他にイオン交換がある。荷電モザイク膜は正両イオンの交換部を空間的に隔てて交互に持つ多相構造の膜であり、圧透析によって塩が透過側に濃縮される。この場合、イオン交換基にイオン選択性を持たせることによって、イオン選択透過性のある膜が得られるものと期待される。 3.研究経過と考察.荷電を持たない圧透析膜の候補として、クラウンエーテル構造を含むポリアミド膜(【1!〜】),ポリフェニレンオキシドから誘導されるホスホン酸エステル膜(【2!〜】,およびベンゾイミダゾロン構造を含むポリアミド膜(【3!〜】)を検討した。【1!〜】〜【3!〜】いずれも粉末の状態では水溶液中から重金属イオンをハロゲノ錯体あるいは擬ハロゲノ錯体として良く収着したが、金属選択性は、酢酸セルロースの場合と大きな差はなかった。また、製膜したとき、圧透析膜として使用に耐える性能のものが得られなかったこと(【1!〜】,【2!〜】),および、金属選択収着性があるにもかかわらず、透過に選択性が見られない(【3!〜】)など、高分子の合成過程および製膜に問題を残した。一方、荷電モザイク型膜については、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の微粒子を塩化ビニルにドーブする形でキャスト製膜したものについて検討した。カチオン交換樹脂として、ジベンゾ-18-クラウン-6骨格を持つ樹脂をスルホン化して用いたところ、この樹脂のカチオン選択性に応じてアルカリ金属塩を透過させることがわかった。
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