研究概要 |
強誘電性を持ちやすい構造であるペロブスカイト型結晶構造を取り上げ、構成粒子の配行と物性の関係,繊維状原料粒子の合成,構成元素の性質とキュリー点の関係について研究がなされた。 (1)チタン酸カリウムより合成されるチタン酸バリウム繊維状粒子を加圧成形し、その成形物を焼結して得られる圧電性磁器において特異な圧電特性を見出した。即ち、従来法によるチタン酸バリウム焼結体では経方向と厚み方向の共振現象が観測されるが、繊維状粒子から作られたものでは厚み共振は観測されず、経方向共振のみが観測された。 (2)チタン酸バリウムよりキュリー点が高く優れた圧電特性を有するチタン酸鉛の出発原粒を繊維状粒子とした場合、上述の様を持ちを持ち、しかも性能の高い素子を得られると予想される。水和チタン酸カリウムを脱カリ処理して得られた酸化チタン水和物繊維と水酸化鉛を水酸化カリウムによるアルカリ水溶液中で水熱反応させると、酸化チタン水和物繊維と鉛イオンによる溶解折出反応が起こり、繊維形状を維持したままでチタン酸鉛を合成することができた。得られたチタン酸鉛は繊維長50〜100μm,繊維経1〜10μmの正方晶の維晶質繊維であった。 (3)既知の変位型強誘電について、物質に関わる様々な物理量の中からキュリー点と相関性の高いものを探索した。その結果、原子間結合の共有結合エネルギーにおいてそれが顕著であることを見出した。ペロブスカイト型酸化物は原子間結合の共有結合性が強い。それゆれ共有結合エネルギーの大きい物質は強い弾性力を持ち、格子の歪みを妨げようとするので、キュリー点が低くなる。共有結合エネルギーがキュリー点と相関関係にあるということは、共有電的相転移を起こす要因である所の双極子間相互作用に拘らず、妨げる要因である弾性力の大小だけが強く効いていることを示しているという知見を得た。
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