研究概要 |
本研究では、スパッタ法,電着法,合金,高分子固体電解質(SPE)膜など、種々の方法により電極触媒を調製し、それらの表面構造やオージェ電子分光法等による表面状態分析に関する知見と、炭素化合物系燃料(メタノール,ホルムアルデヒド,ギ酸等)の陽極酸化反応に関する特性の検討を行い両者の対比から電極触媒活性発現の機構を解明することおよび高活性な電極触媒の設計を試みることにより、有機質燃料を用いる燃料電池開発に資することを目的とした。得られた成果は以下の通りである。 1.メタノール燃料電池用陽極 まずin situ反射赤外法により、メタノール,ギ酸等がpt陽極上で酸化する際吸着CO(ads)が生成することが観察され、電気化学的な挙動との対比から、これが電極性能を低下させる被毒種であると結論された。これに対し、PtをSPE膜と接合すること、およびSnあるいはRu等の異種元素をPtへ導入することにより、高い活性とその持続性が見られた。また従来よりCOに対し優れた耐被毒性を持つことで知られている炭化物を電極とした場合および導電性に優れたタングステンブロンズ電極等を用いることにより、良好なメタノール酸化活性が見られた。 2.ホルムアルデヒド燃料電池用陽極 アルカリ性溶液中でのホルムアルデヒドが、Au,Ag,Cu上で容易に酸化されることに注目し、これらの燃料電池用陽極材としての可能性を検討した。まず速度論的考察から、反応はメチレングリコールイオンを介して、【HCOO^-】および【H_2】生成まで進む部分的なものであることがわかった。他方IB族元素にPdを加えた合金特にアモルファス合金の場合、ある組成において【H_2】の発生が見られなくなると共に、副生する【HCOO^-】もHCHOの酸化と共に遂次酸化された。この際合金内へ水素が入ることがin situX線回析法より確認されたが、その量はわずかで、水素の大部分は酸化されているものと判断された。
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