研究概要 |
グロー放電によるRFスパッタリング法を用いて種々の金属(Ni, Pd, Pt, Ru)の薄膜およびホウ化物, リン化物合金薄膜を調製した. 放電ガス組成を変えることにより種々の組合の合金薄膜が容易に調製できた. また金属にBやPを混入させると薄膜は広い組成領域でアモルファス状態となった. さらに金属の電子状態はBの電子供与性, Pの電子受容性により自由に制御できた. すなわちホウ化物合金では金属のd電子密度は高くなり, リン化物合金では低くなった. これらの合金薄膜を用いてジオレフィン(1, 3-ブタジエン・シクロペンタジエン)およびアセチレンの水素化反応を行った. 部分水素化選択性は, 金属の電子状態の変化によるリガイド効果と, 合金化による金属アンサンブルの大きさの変化によるアンサンブル効果により変化した. その結果金属アンサンブルが小さいほど, 金属の電子密度が低いほど高い部分水素化選択性を示すことがわかった. また特にアモルファスPd75P25薄膜では非常に高い部分水素化選択性(95%以上)が得られ, この薄膜に熱処理を施すと薄膜は結晶化し, さらに高い選択性(99%以上)が得られた. 次に金属薄膜(Ru, Pd)の膜厚による構造変化と部分水素反応の活性, 選択性との関連について調べた. これらの金属薄膜はスパッタリング膜特有の柱状構造をもち, 膜の成長とともに柱は長くなった. また結晶面の配向性は成長初期では最稠密面に配向するが膜の成長とともに複雑な配向となった. すなわちRu薄膜では(002)配向から(101)配向へ, Pcl薄膜では(111)配向から(220)配向へと変化した. 配向性の変化は部分水素化選択性に大きく影響し, Ruでは(002)配向が発達しているほど, Pdでは(220)配向が発達しているほど高い部分水素化選択性を示した. 柱状薄膜の表面積は膜の成長とともに増大するため水素化活性は高くなり, 高活性, 高選択性薄膜触媒がPd薄膜において達成された.
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