研究概要 |
「キラルエノラートを転位末端とする不斉〔2,3〕Wittig転位」に関する本研究の成果は次の1〜3にまとめられる。 1.キラルオキサゾリン環をキラル補助基とするリチウムおよびカリウムアザエノラート型不斉〔2,3〕転位を広範囲に検討し、比較的高い不斉収率(78〜95%ee)を与える転位系の関発に成功するとともに、興味ある対カチオン効果(【L:(O!+)】対【K^(O!+)】)やクラウンエーテル添加効果を見出した。さらに、この不斉合成手法を用いて非天然型ベルカリノラクトンの不斉合成を行った。 2.プロリノールやバリノール由来のキラルアミド系をキラル補助基とするアミドエノラート型不斉〔2,3〕転位を検討した結果、この不斉転位では極めて高いエリトロ選択性がえられるものの、その不斉収率はは予期に反して最高60%eeと比較的低いものであった。しかし、ここでZr-エノラート末端がLi-エノラート末端と逆の立体選択性を示すという興味ある結果をえた。 3.8-フェニルメントール由来のキラルエステル系をキラル補助基とするエステルエノラート型不斉転位を広範囲に検討した。その結果、Li-エノラートを転位末端とする不斉転位では、高いエリトロ選択性とともに極めて高い不斉収率(795%ee)がえられることを見出し、この不斉転位がα-ヒドロキシ-β-アルキルカルボン酸誘導体の有効な不斉合成法となることを、ベルカリノラクトンなどの不斉合成を通して明らかにした。さらに、トランスメタル化によって発生させたTi(【IV】)-Sn(【IV】)-およびZr(【IV】)-エノラート末端の転位挙動をも検討し、前二者では意外にも極めて低い不斉収率しかえられなかったのに対して、後者ではLi-エノラートに比肩する高い不斉収率がえらわるという興味ある結果をえた。これらの結果から、関与する金属エノラート種の構造に関して貴重な情報を得ることができた。
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