研究概要 |
盃型をしたカリキセレンの空孔の上辺と下辺のいずれかにスルホン酸基をもつ水溶性カリキセレンを合成した. これらの化合物は種々の有機分子とホスト・ゲスト型の錯体を形成し, 空孔の大きさによって分子認識をすることがわかった. 上辺のOH基をアルキル化したものは分子識別能を持った新しい界面活性剤となる. 特にO-ドデシルーP-スルホナートカリックス〔6〕アレンは水中で1分子ミセルを形成し強い可溶化力を有している. キラルなカリキサレンを水溶性カリキサレンより合成した. それらはゲスト分子の包接によってCDスペクトル変化を示した. この変化は"alternate"より"Cone"構造へのコンホメーション変化によるもので, コーン構造のカリキセレンはオルタネイト構造よりもゲスト結合に適した空孔を与えるためと解釈された. 水溶性のカリックス〔5〕および〔6〕アレンはウラニルイオン(UO_2^<2+>)と安定な錯体を形成し, その安定度定数は10^<18>-10^<19>M^<-1>という極めて大きな値であった. 更に他の金属イオンに対するUO_2^<2+>の選択性は10^<12>より大であった. この非常に大きな結合性と選択性はUO_2^<2+>と錯体形成に対してあらかじめ組織化されたカリキサレンの独特な構造によっているものと考えられる. 最後に水溶性のカリックス〔4〕アレンの4つのOH基のそれぞれのpKa値が決定された. pKa_1(第1解離)値は0-1で, 一方pKa_4(最後の解離)値は12-16であった. このことよりカリキセレン類は強酸性のプロトンと強塩基性のオキシアニオンを1分子内に持つ極めて興味深い物質であるといえる. このことは分子内のOH基の間の強い水素結合によっている. これらの結果よりカリキセレン類は新しいリガント, 界面活性剤, 触媒およびホスト分子を設計するための基本骨格として役立つことがわかった.
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