研究概要 |
本研究は、異種の高分子量ポリマー混合系において、従来あり得ないと考えられていたUCST(上限臨界共溶温度)現象の発見に端を発する。本研究では、(1)UCST以上の高温域にLCST(下限臨界共溶温度)も存在することを見い出すに至った。つまり、UCSTとLCSTが対で存在することが判明した。(2)このUCST・LCST共有型相図を、ホモポリマー(Homo)/ランダム共重合体(RCP),RCP-1/RCP-2,Homo-1/Homo-2の組み合せについて見い出し、この現象の普偏性を明らかにした。(3)二相域から一相域に急昇温(T-jump)させ、その後の等温相溶解過程での光散乱実験より、拡散係数【〜!D】を求めた。【〜!D】の温度依存性より、スピノーダル点を求め、相図を描いた。(4)分子量が十万以上の高分子/高分子混合系におけるUCST・LCST共存現象は、従来の理論では説明できない。混合状態に関する秩序パラメターを対応状態理論に導入することによって、このUCST・LCST共存現象の理論的解釈を試みた。さらに(5)二相領域内でのT-jumpあるいはT-dropによる二相構造の変調・消滅さらにその後の新しい相分離構造の発展についても、興味深い知見の集積を図ることができた。これらについては、非線形拡散方程式を用いた計算機実験を介して、それらの本質の理解を試みつつある。 以上のように、本研究は異種高分子混合系の相平衡・相溶解・構造発現に関する基礎化学的究明を目的としたものであり、その成果は所期の期待を上まわるものであると考えられる。また多相構造制御に関する新概念の提案という応用工学的展開にも発展しつつある。本研究で得られた知見ならびに本研究補助金で装備した設備は、このような新展開にも有効に応用され得るものであり、今後とも系統的な研究を続行する予定である。
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