研究概要 |
高分子固体材料が三軸応力場で示す力学的挙動は未知の部分が多く、例えば二種類以上の高分子を複合材料や高分子を繊維の複合材の強度設計などの基礎となる知見に欠けていたが、本研究で主にゴム状固体の高分子について、これら、未知部分がかなり解明された。以下にまとめると、 1.加硫ゴムは三軸応力下においてもかなり顕著な粘弾性挙動を示すが、それは一,二軸応力下でのそれと全く異なる挙動を行なう。一,二軸応力下では加硫条件やゴムの種類で挙動は大きく変るが、三軸応力下ではこれらにはよらずほぼ一定の挙動を示し、室温に於てほぼ二,三時間で平衡に近ずく。温度に対しても高温で緩和現象が加速される挙動を示すが、一,二軸応力下では逆に室温から低温例になるほど加速現象が認められている。 2.粘弾性挙動は応力に大きく依存する。体積圧縮状態では応力の絶対値の減少と共に緩和現象は顕著になり、さらに体積ぼう張状態ではさらに加速され緩和量も大きくなる。 3.等速での体積ぼう張,圧縮の繰返し変形を与え、体積弾性率を調べると、ポアソン比が0.499〜0.5の間に存在するため一軸弾性率の約1000倍の値を示す。しかし、圧縮時に対しぼう張時間は約1/2に体積弾性率が下ることが確認されている。 以上の研究はイソプレンゴム,シリコンゴム,SBRなどの加硫ゴムを用いて行われたが、この研究をもとに、今後はゴム状からガラス状への移行に伴なう挙動の変化に焦点を絞って研究を続けたい。なおこれまでの成果は、いろいろの基礎的研究に役立つが、例えば耐衝撃高分子の衝撃に耐える機構の解明に直ちに応用される。
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