研究概要 |
高分子材料の形状を光照射により可逆的に変形させることができれば、光一力学エネルギートランスデュサーへの利用のみならず、光駆動分子バルブ等光駆動分子素子への応用・展開が期待される。本研究では、大きく光変形し、かつ速い応答速度を持つ高分子材料の作成をめざし、光イオン解離する官能基をもつ高分子ゲルを作成した。光イオン解離により、ゲル中の固定電荷数が変化し、その結果ゲル内の浸透圧が増減し、ゲルが膨潤・脱膨潤すると考えられる。 トリフエニルメタンのロイコ体を1〜4モル%含むアクリルアミドゲルを合成し、水中において膨潤平衡にしたのち、紫外光を照射すると、ロイコ体はイオン解離し、その結果ゲルは10〜15倍に膨潤し、またその寸法は2.0〜2.5倍拡大した。棒状ゲルを作成し、片側のみから光照射し、屈曲速度を測定した所、先端へ変位速度は0.3mm/min程度の値が得られた。光照射を止めると、ゲルはゆっくりと(0.3mm/n)、元の形状へ回復した。このゲルを含むポソビニルアルユール膜を用いて、水透過性の光制御を実現した。 光応答速度を加速することをめざして、電場効果を検討した。棒上ゲルに対して、短軸方向に10V/cmの電場を印加した状態の所へ光照射すると先端位置の変位速度は、20倍以上加速された。電場をとりのぞいたあとの回復速度は、600倍以上の加速がみられた。電場下、光照射による変形速度は印加電圧,添加塩濃度に依存し、【10^(-3)】MのNaClを添加するとゲルの先端は、3mm/secで変位することが認められた。以上、大きく変形し、かつ速い応答速度を持つ高分子材料を設計するための基礎となる知見が得られた。
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