研究概要 |
固定化微生物の挙動を検討する為に、前年度においては酵母Saccharomycescerevisialをアルギン酸カルシウムで固定した生体触媒についてその動力学的性質を検討した。その結果、固定化担体内における拡散の影響が大きいことがわかった。そこで、本年度においてはSaccharomycesよりも反応速度の大きなZymomonas mobilisを同様に固定化した系について拡散の影響を検討した。 先ず、遊離の菌体の反応速度を測定し、基質および生成物濃度の低い領域ではミハエリス・メンテン型の反応速度で表現できることを得た。実験結果から速度定数とミハエリス定数の値をそれぞれ5.0【h^(-1)】,1.0Kg【m^(-3)】と求まった。 次に固定化担体内の拡散係数を測定した。拡散物質としては今回はガラクトースを使用した。その結果、拡散係数DeはSaccharomycesのときと同様にDe=Do×【K_1】【(1-K・2Co)^2】の形で表わされた。ここに、Doは水中の拡散係数、Ccは菌体濃度である。【k_2】は菌体の比容積にほぼ等しいことがわかった。 菌体が担体内に均一に分散している状態(固定化静止菌体)について総括反応速度を測定し、担体内拡散抵抗を考慮したモデルで検討した。有効係数の形で整理すると実験と理論とは同一の傾向を示した。固定化に際して菌の活性が低下し、遊離菌体の活性の80%に下るとすると実験値は計算値に一致する。基質濃度が80g/l以上になると阻害の為、解析を行うことが困難であった。 尚、Zymomonasを固定化した後に増殖させると、基質濃度が低いときには普通の菌体と同様に担体の表面近傍において菌体密度が高くなるが、基質濃度が高いときには阻害効果の為に中心付近で密度が高い。今後の興味ある課題であろう。
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