研究概要 |
固定化生体触媒の応用に際して, 担体内の物質移動の反応に及ぼす影響を検討することは重要な課題である. 本研究においてはこの問題をアルギン酸カルシウムゲルを用いた固定化微生物, および固定化植物細胞について取上げ, 定量的に解析を行った. 微生物としてはパン酵母およびZymomonas菌を用い, 植物細胞にはPapaver somniferum(ケシ)を採用した. (初年度)固定化酵母における拡散抵抗の影響を固定化静止酵母ならびに担体内に菌体の密度分布を生ずる固定化増殖酵母について検討した. 先ず, 担体中に菌体が存在する場合の有効拡散係数を実測し菌体による拡散面積の現象を考慮したランダム・ポア・モデルで相関を行った. 遊離の酵母によるエタノール生産速度を実測し反応速度式を求めた. 次いで, 求めた反応速度と有効拡散係数とを組合せて総括の反応速度を計算し実測値と比較した. 計算値と実測値とはよく一致し, 菌体密度が大きくなると拡散抵抗が大きくなる為に却って総括反応速度が下ることが明らかになった. (次年度)固定化Zymomonas mobilisについても同様のアプローチを静止菌体についても行い, 固定化した場合の総括反応速度から触媒有効係数を求めた. その結果, 菌体の反応速度は遊離の状態の約80%程度に低下していることが示された. (最終年度)植物細胞を固定化して同様に反応工学的解析を行った. Papaver somniferumを固定化してコデイノンからコデインへの転換反応を行ったところ, 一回の回分反応では遊離の細胞と同じ活性を示したが, くり返し反応を行うとその度毎に活性が下ることが示された. 基質の拡散についての解析から, 酸素の移動抵抗が活性の低下に影響を与えることが明らかになった.
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