研究概要 |
異種遺伝子組換え微生物を培養して有用物質を効率的に生産するには、遺伝子のクローニングも重要であるが、効率的な培養法の確立も重要である。このためには、遺伝子コピー数の制御,転写効率の制御,プラスミドの安定性および栄養源濃度の制御について研究し、反復流加培養に適用することが重要となる。そこで、まず組換え菌のプラスミド安定性について研究した。酵母エキスやポリペプトンなどを含む天然培地を用いるとプラスミドを比較的安定なこと、合成培地を用いた連続培養では突然変異によってプラスミドが安定した株が得られることを明らかにした。 工業的に重要なトリプトファンプロモーターの下流にβ-がラクトシダーゼ遺伝子を連結し、転写効率の制御について研究した。トリプトファンによる転写効率の制御は強力ではあるが、培養条件によっては多少甘くなり、反復流加培養を行なうためには炭素源を切り換えるが、濾過を行なうことが大変効果的なことを見い出した。これらの方法によって、組換え菌を高密度に培養すると共に、全タンパク質の10%に相当する遺伝子産物が生産できた。また、温度感受性プラスミドを用いてプラスミドのコピー数の制御についても研究した。温度感受性プラスミドを形質転換した大腸菌を30℃で培養するとプラスミドコピー数は増加し、反復流加培養には適していなかった。25℃ではコピー数は低く保たれ、その結果としてプラスミドは安定で大腸菌の増殖速度も高いこと、37℃培養温度をあげることにより効率のよい遺伝子産物の生産が可能なことを明らかにした。また、この過程を表現する数学モデルを作り、培養のスケールアップも容易であることを示した。さらに栄養源の制御に新たに開発したグルコースセンサーと濁度センサーが有用なことを示した。
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