1.アルミニウム耐性が弱いオオムギにおける、アルミニウムによる燐の吸収・地上部移行阻害の主因は、アルミニウムによる根の伸長阻害にある。 2.オオムギの単位根長当り燐吸収能は、2ppmAlにより高燐条件下では阻害されないが、低燐条件下では強く阻害され、アルミニウムによって燐の地上部移行量低下がもたらされる第2の要因になる。 3.根における燐とアルミニウムの共沈は、作物のアルミニウム耐性の強弱をとわず燐の地上部移行を阻害するが、この要因による燐の地上部移行阻害の程度は小さい。 4.上記の結果、アルミニウム耐性が弱い作物の場合には、培地の燐濃度が0.05ppmPあるいはそれ以下の条件下で、アルミニウムによって燐欠乏が強く促進され、アルミニウム障害と燐欠乏が併発することになる。したがって、培地にAlが共存する場合には、高燐条件と比較して低燐条件で、作物の生育はより強く阻害される。 5.アルミニウム耐性が強いイネでは、根の表面における燐とアルミニウムの共沈のみが、アルミニウムによる燐の吸収・移行低下の原因であり、したがって、アルミニウムが燐の吸収・移行におよぼす影響は小さい。 6.アルミニウム耐性を異にするコムギ10品種の地上部P含有率は、10ppmAl処理によって、耐性が弱い品種ほど低下する。アルミニウムによる燐の地上部移行の低下を支配する要因としては、アルミニウムによる根の伸長阻害に起因する個体としての燐吸収能の低下が最も重要であり、根における燐とアルミニウムの共沈およびアルミニウムによる単位根長当り燐吸収能の低下も2次的な要因として寄与する。
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