研究概要 |
灰色低地上(タマネギ畑)および栃木農試黒ボク土(ホウレンソウ・コムギ)におけるリン酸の理論的上限と栽培上の適正上限の解明(土肥誌・voL56,279〜284,285〜291,voL58,27〜34)に続いて、本年度は各地の農業試験場で行われたリン酸に関する作物試験のうち、三土壌を選び、これまでの研究方法を適用してリン酸の上限を明らかにした。供試土壌は次のとおり。兵庫土壌(兵庫農総センター):細粒灰色低地土灰褐系-宝田流,群馬土壌(群馬農試):灰色低地土灰褐系-金田統,茨城土壌(茨城農試):厚層多腐植質黒ボク土-内原統。各土壌は2万分の1アールポット当り、Ca【CO_3】1g、【(NH_4)_2】【SO_4】2.9g,KCL3.0gを添加し、さらに重焼リンを八段階に加え、40〜70日間畑状態にしてガラス室内に放置した。得られた成果は次のとおりである。 1.土壌溶液のリン酸濃度はいずれの土壌も有効態リン酸レベルの増大に上昇した。有効態リン酸100mg付近までは土壌間に差はほとんどみられなかったが、100mg位上になると差が大きくなり、有効態リン酸に対する土壌溶液のリン酸濃度は、兵庫〉群馬【〜!-】茨城の順となった。2.Al【(OH)_2】【H_2】【PO_4】(非晶質)-Al【(OH)_3】(非晶質)-Ca【HPO_4】2【H_2】O-【H_2】O系におけるリン酸の溶解度図を作成し、各土壌のリン酸の上限を求めた。兵庫、群馬・茨城の三土壌溶液のりン酸濃度が【10^(-3.35)】〜【10^(-3.9)】Mで非晶質リン酸アルミニウムの溶解平衡に達した。このリン酸濃度はそれどれの作物試験の収量低下または生育障害の発現領域に対応した。3.作物試験(各県農試)における最高収量または収量横ばい領域は土壌溶液のリン酸濃度【10^(-5)】M付近に相当し、これは土壌の有効態リン酸100mg程度に対応した。これを本研究では土壌や作物の種類を無視して定めうる栽培上の適正上眼とした。この適正上限値は前年度までの結果(既報文・土肥誌)とも一致するものであった。
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