研究概要 |
動物の遺伝子の組織特異的発現,時期特異的発現,協調的発現の機構をクロマチンレベルで解析することを目的として(1)カイコの脱皮周期に伴うフィブロインH鎖遺伝子の転写活性の変動とクロマチン構造の変動との関係、(2)異なった染色体上に存在するフィブロインH鎖遺伝子とフィブロンL鎖遺伝子が協調的に発現制御を受ける機構について研究した。また、遺伝子発現の一時的あるいは長期的抑制の機構をクロマチンレベルで解析することを目的として(3)ニワトリのW染色体(雌特異的な性染色体)に特異的な反復DNA配列とWクロマチンの体細胞核内における異常凝縮との関係に着目した研究を行った。それぞれの研究項目についての主要な成果は以下の通りである。 (1)カイコの後部絹糸腺におけるフィブロインH鎖遺伝子のクロマチン構造が、転写の活性時(4令,5令期)にはヌクレアーゼ感受性の、転写の不活性時(4眠期)にはヌクレアーゼ抵抗性の状態となり、脱皮周期に伴って周期的変化を示すことが明らかになった。転写の不活性な4眠期ではH鎖遺伝子の5′-ヒ流域-550bpのPstI部位が5令期と較べて酸素分解に抵抗性を元すという特徴も認められた。(2)フィブロインL鎖cDNAクローンの全塩基配列を決定した。L鎖遺伝子の構造の一部も明らかになった。その結果、5′-ヒ流-415〜-226bpの範囲内に3ヶ所、H鎖遺伝子の5′-ヒ流-273〜-193bpに含まれる配列と同一の配列が存在することが示された。(3)ニワトリのW染色体DNAの約50%を占める。この染色体に特異的な反復塩基配列の反復単位を3個独立にクローン化し、それらの塩基配列を決定した。また、これらの配列に高親和性結合を示すタンパク質が肝臓の核から分離、精製させれた。このタンパク質("W-protein)の分子量は約72KDaと推定された。
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