研究概要 |
工業化会社の食生活においては, 人間がこれまでほとんど摂取することのなかった種々の生体異物(ゼノバイオティクス)を環境化学物質や食品添加物として摂取する機会が多くなってきている. また, 種々の合成医薬を服用することも多い, 生体異物は化学構造, 生理作用などで多種多様であるが, 本研究からこれらの物質が一般にビタミンC, Eなどの必要量を増加させ, また, 血中コレステロール濃度を増加させることなどが明らかとなり, 食生活における生体異物の問題の重要性が示された. 得られた成果の大要は次の通りである. 1)PCB, DDTなど各種生体異物により血清コレステロール濃度が共通して増加することを見出した. これは主として肝でのコレステロール合成の上昇によることを3H_2Oの肝コレステロールへのin 〓ivoでのとり込み実験, コレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoAレグクターゼ活性誘導から明らかにした. このような変動にともなって尿中カテコラミン排泄は増加し, α-受容体の遮断剤によって阻害されることからカテコラミンがこの作用に重要な役割を有することを示唆した. 2)生体異物はまた, ラットでのアスコルビン酸(ビタミンC)の合成を著しく促進することも酵素的に明らかにするとともに, ヒト, モルモットなどのような体内でアスコルビン酸合成のできない動物においては生体異物によってビタミンC必要量が増加することについても, 遺伝的アスコルビン酸合成不能ラットを用いて詳細に解明した. 3)生体異物はその代謝過程で活性酸素が生じることから生体脂質の過酸化反応を促進させること, ビタミンC, ビタミンEの投与量の増加でかなり制御できることも示した. 4)高令化社会では成人病も多く, 医薬の形で生体異物の摂取量も増加することから, 各種成人病モデル動物について生体異物の代謝的影響につしても検討し, これからの条件で特にその影響が増幅されることも示した.
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