植物PSIには、単独で存在する【I】型と、糖結合性蛋白質と結合して存在する【II】型がある。われわれは、前者からヘチマ及びアメリカヤマゴボウ種子のルフィン及びPAP-Sを、後者からヒマ及びトウアズキ種子毒蛋白質リシン及びアブリンのA鎖を選び、それらの一次構造及び活性基について研究を行った。 一次構造に関しては、アブリンA鎖(249残基)の全アミノ酸配列、ルフィンa(255残基)の約3/4及びPAP-S(270残基)の約1/3の配列が決定された。【I】型PSIに属するトリコサンチン(既報)とルフィン間では53%が、【II】型PSIに属するリシンとアブリンのA鎖間では39%が同一で、高い相同性を示したが、【I】型と【II】型間では相同的ではあるが、前者がLysを多く含むのに対し、後者はArgを多く含み、そのアミノ酸配列はかなり異なることが明らかになった。 一方、活性基に関しては、リシンA鎖、アブリンA鎖及びルフィンともにArg残基が活性に関与するが、そのほかアブリンA鎖ではTrp残基が、ルフィンではアミノ基が活性に関与し、3者間で同一ではなかった。リシンA鎖の活性基としては、N-端領域のArg残基が同定されたが、これらPSIのN-端領域においては、このArg残基を含む8箇所に共通アミノ酸残基が存在することが明らかになった。一方、C-端領域においては相同性は殆んどみられず、鎖の長さもまちまちであり、さらにリシンA鎖においては、C-端領域を除去してトリコサンチンと同じ長さにすると、活性が失われた。。これらの結果から、活性Arg残基を含むN-端領域はその触媒作用に、C-端領域はその特異性に関与することが推察され、さらにPSIのリボゾーム上の作用点はPSIの種類によって異なる可能性が示唆された。
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