研究概要 |
本研究の目的は、枯草菌の染色体上に意図的に、予定した領域の遺伝子増巾を誘起すること、及びそれを蛋白生産に結びつけようとするものである。 今迄の我々の研究から遺伝子増巾を誘起する形質転換DNAの基本構造は、増巾単位のつぎ目部分の構造であることが分っている。従って予定された領域の遺伝子増巾を誘起しようとすれば、in vitroで2つのクローン化されたDNA断片を連結し、人工的に増巾単位のつぎ目構造をつくればよいことになる。そこで我々はα-アミラーゼの構造遺伝子amyEの上流に位置する5.1kbEcoRI断片をまずクローン化した。次いでamyE遺伝子より10kb下流にあるシキミ酸キナーゼの構造遺伝子aro【I】に隣接した0.8kb Hind【III】-Cla【I】断片をクローン化した。この2つのDNA断片を、染色体上の並びの方向は変えずに、染色体上の相対的並びの位置をひっくりかえしたin vitroで連結し、予定増巾単位のつぎ目構造を作出した。予定通りであれば、このDNAを形質転換DNAとすると、amyE,tmrB,aro【I】を含む22kbの領域の遺伝子増巾が誘起される筈である。10μpのDNAを用いてやっと10株という少数のツニカマイシン耐性形質転換体が得られた。10株のうち4株はα-アミラーゼの高生産性を示した。このうちの2株をとり、染色体DNAを調製し、制限酵素で分解後電気泳動すると、いくつかの濃く染色されるバンドがみられた。それらの長さの統計は予定通り22kbであった。またクローン化した5、1kb EcoRI断片、amyE,tmrB,aro【I】遺伝子をプローブDNAとしたサザンハイブリダイゼイションでも正しく予定された領域の遺伝子増巾が起っていることが確認された。これら2株の形質転換株のα-アミラーゼ高生産性とツニカマイシン耐性はamyE及びtmrB遺伝子の増巾によるものである。aro【I】遺伝子も増巾しており、実際シキミ酸キナーゼの比活性は約4倍に上昇していた。
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