1.【Zn^(2+)】のAcremonium菌の菌糸に対する形態変化誘導活性とセファロスポリンC生産におよぼす効果 我々は先にセファロスポリンC生産菌A.chrysogenum ATCC14553株の培養物中に分節胞子様細胞を分化誘導する活性物質が存在することを見出し、その単離を行った。しかしかながらその後、本菌株の形態変化能は著しく低下し、同時に活性物質を再現性よく培養物中に見出すことが不可能となった。そこで培養条件を種々検討した結果、形態変化を良く起こさせるためには培地へ【Zn^(2+)】を添加することが有効であることを見出した。【Zn^(2+)】は上記菌株のほか、A.chrysogenumやA.strictumの数菌株に対しても形態変化を誘起した。【Zn^(2+)】による形態変化誘導がセファロスポリンC生産にいかなる影響を与えるかは、【Zn^(2+)】が菌体の増殖にあまり影響をおよぼさないA.strictum ATCC20339株を用いて調べた。その結果、菌糸の形態変化は【ZnSO_4】濃度が1μg/nlから始まり25μg/mlまで濃度を上げるにつれて太く膨潤し、長さが短くなった。一方、セファロスポリンC生産はZn【SO_4】濃度が2.5μg/mlの時に最大となり、それ以上の濃度では逆に生産量が低下した。このことは【Zn^(2+)】によって誘導される形態変化とセファロスポリンC生産との間には直接の相関がなく、むしろ形態が変りつつある時期に最大となった。 2.Acremonium chrysogenumの形態変化誘導物質の検索 本菌に【Zn^(2+)】を含まない培養条件で形態変化を誘起させることができた場合に、【Zn^(2+)】とは別に本菌自身の生産する形態変化誘導物質が存在するか否かを検討した。ATCC14553株をニトロソグアニジン処理することによって【Zn^(2+)】とは無関係に形態変化を誘起する変異株を2株分離することができた。このうちのNo.14株の培養濾液濃縮物を【Zn^(2+)】が存在しない条件で親株に与えたところ形態変化を誘導した。No.14株の生産する形態変化誘導物質は塩基性の水溶性化合物であると考えられ、現在精製を進めている。
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