研究概要 |
木材腐朽菌類は食用キノコ,サルノコシカケ等多種の有用な菌類を包含している。そのなかでもシイタケ,カワラタケ,スエヒロタケからは免疫賦活多糖類が、トリポクラジウム属菌からは免疫抑制作用物質が発見され、木材腐朽菌類は医薬質源探索に興味ある対象と考えられる。 我々はシイタケ栽培のホダ木に寄生し、その栽培に被害を与えるトリコデルマ,ヒポクレア属菌に焦点をあて、それらから生物活性成分を単離し、それらの構造と生物活性に関する研究を開始した。その結果下記の成果を得た。 1.抗免疫物質の探索と木材腐朽菌の分離と培養: Trichoderma polysporum菌6種を分離し、グルコース・ペプトン・酵母エキス培地で培養した。培養液はアンバー-ライトXAD-2に吸着,メタノール,酢酸メチルで溶出,菌体はメタノールで抽出した。免疫抑制反応はマウス同種リンパ球混合反応(MLR)を用いて検定した。アンバーライトXAD-2のメタノール溶出部に強い活性が認められるもの4種,菌体抽出液に活性の認められるもの4種であった。 2.トリコポリン類縁体のラット肝ミトコンドリアに対する作用: トリコポリンの脂肪酸部をデカン酸,新規アミン酸をイソロイシンに置換された合成トリコポリン類縁体は天然と同程度の活性を示し、ペプチド鎖が減少するにつれて活性は減少,脂肪酸欠除の類縁体は活性を示さなかった。 3.ヒペルシン類の抗免疫活性: 現在マウス同種リンパ球混合反応により試験中である。 4.菌相互作用により生産されたシイタケ菌の新代謝産物: シイタケ菌とトリコデルマ菌を拮抗培養させると、シイタケ菌が抗菌性の5種の直鎖三重結合,二重結合を有するアルコールを生産した。そのうちの一つレンチアレキシンは新物質であった。
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