研究概要 |
1.多目的キラル合成子の開発と応用:昨年度の成果である隣接アミノアルコール類の汎用性キラル合成子の開発結果を踏まえ、生理活性アミノアルコール群のなかでもアミノ酸系、ペプチド系物質に合成標的をおき、一般性ある合成戦略を確立した。即ち、酵素阻害剤ペプスタチン中の異常アミノ酸スタチン,ベータラクタム類,水酸化グルタミン酸,GABA類似体等への効率よいキラル変換ルートを確立し、構築材としての簡単な複素環体2-オキサゾロンの有用性を実証した。今後、本合成戦略の汎用性と限界を明確にすべく更に広く応用展開をはかる。 2.テロメリ化反応による連続不斉中心の立体選択的構築:一工程で多くの不斉中心の制御と官能基の導入とが達成出来るオキサゾロン体のテロメリ化反応研究と関連して、抗菌性ジクロロスレオニン(アルメントマイシン類似体)の合成に成功した。一方、不斉テロメリ化反応を開発し、アミノ糖類生理活性物質合成を目指した所期の成果をあげるには至っていない。更に広く条件検討を行う必要がある。 3.複素環をベースとする合成試薬類の開発研究:オキサゾロン骨格を共通の脱離基とする活性型縮合試薬やアシル化試薬の開発は昨年度までの成果であるが、今年度は多岐にわたるアルコール類の新規リン酸化試薬の開発に成功した。本試薬系は極めて緩和な条件下、異った触媒能をもつ金属錯体を組み合せ使用することにより段階的選択的にリン酸混合エステルを高収率で合成出来る点に特徴がある。目下、生理活性リン脂質やヌクレオチド合成に向け鋭意検討を行っている。
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