研究概要 |
溶融塩を核エネルギー変換プロセスの機能材料として活用していく場合,これを安全かつ効率よく循環させるためのループの開発が不可欠となる.しかしその実現にあたっては,溶融塩とループ材料との共存性の確保などを含め,多くの解決すべき問題がある. 本研究は,これら問題点を解決することによって溶融塩循環ループの定常運転が確保できるような条件を主として化学的な立場から検討していくことを目的としているが,今年度は特に,(i)溶融塩中で合金が示す熱起電力に関するデータの蓄積と考察,(ii)熱起電力の成因に関する理論の実証,(iii)溶融塩化物系での輸送エントロピーの評価の3点に焦点を合わせ,研究をすすめた. 得られた成果の概要は次のとうりである. (1) 溶融LiClーKCl中でのリチウム・スズ合金の熱起電力を系統的に測定し,組成の如何によってはガス電極系での熱起電力に匹敵するような値を示すことを見出した. また,この現象を非平衡熱力学の立場から説明することができた. (2) 熱起電力の成因に関する筆者らの理論によれば,熱起電力測定電極と同種の電極での単極反応熱と,熱起電力の測定値との間には1:1の対応関係があるはずである. これを実証するために,新たに「電解カロリメータ」を作製し実測値との比較を行ったところ,満足すべき結果が得られた. (3) 溶融LiClーKCl中での輸送エントロピーを,実測値をもとにして計出することができた. 以上の成果と,前年度までに得られた成果とを総合して,溶融塩系での温度差質量移行現象についての理解を深め,防止対策等についての手がかりが得られたものと結論できる.
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