研究概要 |
担子菌の一種、イネ紋枯病菌Rhizoctonia solaniの菌核分化を制御する直鎖DNAプラスミドの構造と機能、ならびにゲノムDNAとの関係について解析し、次の成果をえた。 1.本菌のプラスミド保有株は、成長が遅く、菌核を形成せず、病原性が弱く、多量のシュウ酸を産生した。実験条件下ではプラスミド保有とシュウ酸合成、菌核形成の間には相関関係が認められた。成長と菌核形成が低pH培地中で抑制され、pHを5.5以上に調整することによって菌核形成が可能になることから、プラスミド保有株はシュウ酸の産生によるpHの低下により成長と菌核形成を抑制されていることが明らかになった。 2.本菌のプラスミドは、27キロベースの直鎖DNAであり、各種制限酵素による切断点の解析から制限地図を作製したところ、大きさの等しい2種のプラスミド,pRS64-1とpRS64-2,からなることが明らかになった。各プラスミドをBamHIで切断し、放射能ラベルした断片をプローブとして相互に雑種分子形成を行ったところ、両プラスミドが相同な塩基配列をもつことがわかった。この結果は両プラスミドが同一の起源をもつことを示唆している。 3.本菌のゲノムDNAを制限酵素PstIで切断し、放射能ラベルしたプラスミドと雑種分子形成を行ったところ、ゲノムDNA中にプラスミドDNAと相同な約13キロベースの塩基配列があることを見いだした。この結果はプラスミドがゲノムDNAに組込まれたり切り出されたりする可能性を示すものである。
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