研究概要 |
1.植物体のCN比にもとづいた生長モデルの応用.(1)前年度提出した生長モデル(Hirose 1986)は(【I】)乾物および窒素の各器官への分配率が植物体全体のN濃度と高い相関があること、(【II】)葉のN濃度と葉の厚さには負の相関があることにもとづいていた。本年、これに(【III】)葉の光合成活性は葉面積あたりのN濃度に依存していることを組みこみ、以前に行なったイタドリの砂耕実験のデータ(Hirose 1984)を使って、土壌の栄養環境を変えたときの生長を解析した。その結果、植物は土壌の栄養環境に応じて分配過程を可塑的に変化させることにより、幅広い環境に適応していることを示すことができた。(2)富士山の遷移初期に出現する草本植物-イタドリ・カリヤスモドキ・ノコンギクを栄養条件を変えて砂耕栽培した。データは解析中。 2.植物群落の生産構造とN利用効率。荒川河川敷のセイタカアワダチソウ群落の層別刈取、および異なる葉位の葉の光合成測定とN分析の結果を解析することにより、群落内の葉N分布と群落光合成との関係をモデル化することができた。与えられたN量に対し、群落光合成を最大にする最適なNの分布があること、実際の葉Nの分布が、最適分布に近いことを示した。また、シミュレーションにより、葉層が密になるにつれ、Nの分布は下層から上層へのより大きなN濃度の勾配に対して最適化されることを示した。 3.土壌有機物の分解とCNの放出。(1)ATP,AECの測定により、土壌微生物は長いターンオーバータイムをもつが、生理的に高い活性を維持していることを示した。(2)CN比を異にするリターを恒温培養し、CNの分解過程をあきらかにした。
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