研究概要 |
1.植物の窒素吸収と成長 イタドリは, 供給される窒素量が変化すると, 窒素と乾物の各器官への分配率を変化させた. この変化は, 純同化速度と根重あたりの窒素吸収速度を変数とするモデルによる予測と一致した. こうした物質分配の可塑性をもつ植物は, 窒素供給量の変動する環境下において, 可塑性の少ない植物よりも高い生長速度を維持できることがシミュレーションによって示された. 2.植物群落の生産構造と窒素利用効率 セイタカアワダチソウ群落における窒素の分布は, 葉層上部から積算した葉面積の増加とともに指数関数的に減少した. こうした, 葉層内の不均一な窒素分布は, 群落の光合成量を増加させることに貢献することがシミュレーションによって示された. 3.土壌有機物の分解と炭素・窒素の放出 Adenylate energy chargeを指標として土壌微生物の存在形態を解析すると, その大部分は栄養細胞であり, 胞子は少ないことが示された. 土壌有機物を加水分解するセルラーゼとプロテアーゼについて反応速度論的解析を行うと, 土壌中では酵素量よりも基質量が反応速度の制限要因となり易いことが示された. 有機物の分解初期に土壌微生物のターンオーバーは活発であり, 時間とともにターンオーバーは不活発になっていくことが示された. 有機物分解過程での非共生的窒素固定量は少なかった. 4.その他 数理的に導かれた落葉性木本の最適生長スケジュールは, クワの実生の生長スケジュールとほぼ一致していた.
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