研究概要 |
砂質干潟に生息する内在ベントスを中心とする研究では, 定着後の多毛類幼稚仔が秋冬季の波浪と潮流により受動的に運ばれ, 干潟上の分布に変化を生じること, 波浪に対する抵抗性は各種の生活様式によって異なることについて論文を公表した. 同じ干潟上に生息するテナガツノヤドカリ(十脚甲殻類)については, 繁殖システム, 性的二型, 雄の集団移動等に関する報文を公表したほか, 幼生の定着初期の生存に関し適切な大きさの貝殻資源の供給状態が重要であることを野外実験によって確めた. 潮下帯砂泥底にすむ多毛類chone sp.については, 周年の個体群動態を記録すると共に, 湾内多数地点において幼生定着量とその後の生存過程を解析し, 局地的な個体群維持機構について考察した. 野外及び室内実験により種内・種間相互作用について調べ, 同種の繁殖様式, 発生過程についても知見を得た. 汚染指標生物として知られる小多毛類イトゴカイについては, 個体群動態, 世代解析に関する論文を公表したほか, この種が高たん白の餌資源を必要としており, 有機汚染域に多産するのは耐性が高いだけでなく, 高い増殖能力の維持には汚染環境の高たん白堆泥を必要とすることを明らかにした. 海藻付着甲殻類ワレカラに関する研究では動物個体群の周年変動を付着母体である藻の生活環, 季節消長との関連に着目して研究し, 夏場の局所的な残存個体群からの移入と個体群増殖期, 春の個体群崩壊期における魚類捕食の影響について, 野外実験により検討した. 浮遊幼生に関しては, 富山湾において流況とベントス幼生の分布, その時間変化に関する調査を行った. また沿岸小湾に局在するベントス個体群の存続の可能性に関し, 湾の形状と流況に支配される幼生分散についてシミュレーションによる理論的考察を行った. そのほか成長曲線式に関する考察と半陸生種アカテガニの成長データに対する適用の論文を公表準備中である.
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