研究概要 |
半数体細胞のin vitroにおける継代培養はその植物の遺伝の解析、純系(ホモ接合体)の作出など基礎及び応用の研究に重要である。本研究はスギナ(Equisetum arvense L)の半数体である前葉体をを5年の長期間(1982-1987)にわたり、無菌的に継代培養を続けることに成功した。この半数世代の培養株はムラシゲ・スクーグ培地に3%ショ糖を加えた培地、1000ルックスの蛍光灯、25゜Cの条件で、現在まで高い増殖能を良く保持している。しかし、暗所では同様の条件下でも細胞の増殖率は甚しく低下する。 苗条形成:継代培養株は低濃度のサイトカイニン培地上で培養すると、苗条の分化が誘導される。サイトカイニンとして、ゼアチン、カイネチン、4-PU、6-ベンチルアデニン(BA)を試験した。その中では6-BAが最も効果が高かった。しかしIAA.NAA.ABA.2,4-D.【GA_3】などの植物ホルモンはすべて阻害的にはたらいた。サイトカイニンの処理後、経時的に光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡で分化の状態を観察した。4日目には葉状体の表面の細胞が内容充実して、分裂をはじめるのが観察され、10-12日にはシダ植物に特有な1個の倒4角錐形の頂端細胞が現れ、アポガミーによる器官分化であることが確認された。また、高等植物では器官形成にカルシウムイオンの効果が高いとされているが、スギナのこの実験系では効果は認められなかった。造精器形成:造精器の分化は3%ショ糖、光条件下の継代培養中に各世代とも継続的に観察された。造卵器形成:造卵器の分化には継代培養のショ糖の濃度を3%より0.5%に下げ、さらに6-BAを加えて分化を誘導することができた。この分化誘導は浸透圧の変化によるものではなくて、ショ糖に特異的な作用であることを確かめた。組織は消化酵素(2%トリセラーゼ)処理によってブロトブラストを分離し、さらに培養して細胞壁の再生、細胞分裂、前葉体の再生などの観察をおこなった。
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