研究概要 |
カイコ貯蔵タンパク質1(SPI)とビテロゲニンは発生段階から雌特異的に発現する体液タンパク質である。本研究では、これらタンパク質を指標として昆虫における生化学的二次性徴発現機構を解明するため分子生物学的解析を進め以下の結果を得た。1.雌幼虫脂肪体cDNAライブラリーよりSPIcDNAクローンを単離し塩基配列を解析した。SPI-mRNAの全長は約2.3Kbで、749アミノ酸残基に相当する翻訳領域を有し、N端にシグナル領域が確認された。2.カイコ遺伝子ライブラリーよりSPI遺伝子クローンを単離した。SPI遺伝子は全長約4.7Kbで4個所のイントロンにより分断された5個所のエクソンより構成され翻訳開始コドンの27塩基上流に転写開始点が確認された。 転写開始点より約30塩基上流にTATA相当配列が存在し、さらに上流域にはエクジソン受容体結合部位,転写促進領域の塩基配列が存在した。3.5令幼虫脂肪体cDNAライブラリーより貯蔵タンパク質2(SP2)cDNAクローンを単離し構造解析を行った。SP2は芳香族アミノ酸残基に富み、その一次構造に12SPIのそれと類似性がみられた。4.λgt11発現ベクターを用いた雌蛹脂肪体cDNAライブラリーよりビテロゲニンL鎖cDNAクローンを単離し、その構造を解析した。cDNAを用いたRNAブロツト解析の結果、ビテロゲニンL鎖mRNAは蛹脂肪体特異的に発現することが確認された。5.脂肪体中のSP-lmRNA前駆体RNAの後期発生にともなう変動を解析し、SPI生合成は性および発生段階特異的に転写レベルで調節されていることが判明した。6.脂肪体遊離核および無細胞抽出液中においてクローン化SPI遺伝子は忠実に転写された。 転写は雌特異的で、雄脂肪体抽出液では転写が認められず、SPIの性特異的発現にはトランスに作用する細胞因子の関与が示唆された。
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