ペプチドホルモン受容体の進化と適応

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 60480024
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 石居 進 早稲田大, 教育学部, 教授 (90063528)
• 研究分担者: 竹富 葉子 熊本大学, 理学部, 助手 (90040112) ; 菊山 栄 早稲田大学, 教育学部, 教授 (20063638)
• キーワード: 両生類 / ウシガエル / 精巣 / 受容体 / 生殖腺刺激ホルモン / FSH / LH / 平衡定数

研究概要

ウシガエルを材料に、精巣の生殖腺刺激ホルモン受容体の性質を調べた結果、次のことを明らかにすることができた。
1.ウシガエル精巣の膜分画にはウシガエルFSHを特異的に結合するが、魚類の生殖腺刺激ホルモンや、鳥類のFSHやLHをほとんど結合しないか、したとしても弱くしか結合できない特異的受容体(FSH受容体)が存在する。
2.ウシガエル精巣の膜分画には同様な性質を持つLH受容体も存在する。
3.ホルモンとの結合の平衡定数および、精巣中の結合部位数は両ホルモン受容体とも、ほとんど同じ値を示した。
4.FSH受容体にはウシガエルLH結合できる。
5.LH受容体にはウシガエルFSH結合できる。
6.したがって、ウシガエルではFSHとLHの受容体は別々のものではなく共通のものである。
7.放射性ヨー素で標識したウシガエルFSH,もしくはLHの結合に対する非標識ホルモンの結合阻害実験から、両ホルモンは同じ結合部位を持ってはいても、結合の様式に違いがあることが示唆された。
以上のことから、両生類、少なくともウシガエル、では、生殖腺刺激ホルモンの分子はFSHとLHに分化していても、その受容体の元は完全には分化せず共通の受容体を用いていることが明らかにされた。そして、両ホルモンの作用の違いはその結合様式の違いによることが推察されたが、その機構については更に解析が必要である。また、両生類より下等な脊椎動物では、FSHとLHの分化がおこっていないことが期待され、その面の研究も望まれた。

研究成果

• [文献書誌] Takada,K.;K.Kobokawa;S.Ishii: General and Comparative Endocrinology. 61. 302-312 (1986)
• [文献書誌] Sakai,H.;S.Ishii: General and Comprative Endoctrinolagy. 63. 275-283 (1986)
• [文献書誌] Hattori,A.;S.Ishii;M.Wada: Journal of Endocrinology. 108. 239-245 (1986)
• [文献書誌] Tsutsui,K.;A.Shimizu;S.Kawashima;S.Ishii: Zoological Science. 3. 497-501 (1986)
• [文献書誌] Tasaki,Y.;M.Inoue;S.Ishii: General and Comparative Endocrinology. 62. 404-410 (1986)
• [文献書誌] Itoh,M.;S.Ishii: Zoological Science. 3. 1078 (1986)
• [文献書誌] Kubokawa,K.;S.Ishii: Zoological Science. 3. 1078 (1986)
• [文献書誌] Yamanouchi,H.;S.Ishii: Zoological Science. 3. 1079 (1986)
• [文献書誌] Ando,H.;S.Ishii: Proceedings of the Japan society for comparative endocrinology. 1. 35 (1986)
• [文献書誌] Kikuchi,M.;S.Ishii: Proceedings of the Japan society for comcrative endocrinology. 1. 36 (1986)
• [文献書誌] Yoneyama,H.;S.Ishii: Proceedings of the Japan society for comparative endocrinology. 1. 49 (1986)
• [文献書誌] 窪川かおる,石居進: 哺乳類科学. 52. 45-53 (1986)