昭和60年度および昭和61年度の両年度にわたって交付を受けた科学研究費補助金を補助条件通りに使用し研究を行った結果、以下の研究成果を得た。 1.美濃帯各地の砂岩中のザクロ石の化学組成をEPMAを用いて数多く調べた結果、ザクロ石の多くはMgに富むアルマンディンで、MnやCaに乏しいことが明らかとなった。このようなザクロ石は、泥質〜砂質岩源のグラニュライト相の変成岩類から由来したと考えられる。 2.秩父帯の砂岩中のザクロ石は、一般に、MnやCaに富みMgに乏しい。砕屑性ザクロ石の組成からみると、美濃帯と秩父帯の砂質岩の後背地には有意の差があったと考えられる。このような差異は今回の研究で初めて判ったことで、西南日本のテレーンアナリシスを行う上で大きな手がかりとなる。 3.飛騨帯の手取層群の砂岩には、Mgに著しく富むザクロ石が含まれており美濃帯の砂岩との類似が指摘される。また、飛騨外緑帯のメンバーである上広瀬礫岩を再検討した結果、Caに富むザクロ石を含む片麻岩礫の存在が明らかとなった。 4.岐阜県丹生川村の飛騨外緑帯の横尾礫岩から、二畳紀の放散虫化石を含むチャート礫が数多く見出された。このチャート礫は飛騨外緑帯と美濃帯の関係を考える上で重要な意味をもつ。 5.美濃帯のジュラ紀砂岩と密接に伴って産する珪質頁岩やチャート中のマンガンノジュールについて、岩石学的ならびに化学的な検討を行った結果、ノジュール中より重晶石とlength-slow chalcedonyが見出された。美濃帯のマンガンノジュールは、組成的に、現在の海洋底のマンガンノジュールと全く異なっている。このことはマンガンノジュールを含む頁岩やチャートの堆積環境が、大陸から遠く離れた深海底ではなかったことを強く示唆している。
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