草型を異にするイネ15品種を用いて、圃場における止葉の光合成と気孔コンダクタンスの日変化を携帯型光合成蒸散測定装置で調べ、止葉の葉面積と気孔密度および気孔長、収量および収量構成要素を調査した。 1.光合成の日変化を見ると、最大光合成を示す時刻は大方の品種で10〜12時であったが(9月5日)、8時や14時に最大を示す品種もあった。気孔コンダクタンスは光合成と同様の推移を示し、その最大は光合成の最大とほぼ同一時刻に現れた。18日後の再調査では、半数の品種で最大光合成が8時に現れ、気孔コンダクタンスの最大はさらに1時間早い時刻に現れた。 2.気孔コンダクタンスと気孔密度×気孔長との関係を時刻別に調べると、午前6時から8時までは密接な品種間相関が見られたが、10時にはこの関係が消失した。11時にはやや回復したが、12時には再び消失した。13時、14時には関係が密接となり、15時には三たび消失し、16時、17時には関係が回復した。このように相関関係の有意性が時々刻々変化することは、全品種の気孔行動が太陽放射量の推移に追随するわけではなく、変わった気孔運動をする品種があることを示している。 3.1株収量および収量構成要素と気孔特性との関連を見ると、気孔密度は1穂籾数と密接な関係があり、収量とも関係が見られた。気孔長は、それ単独では何の関係も示さないが、気孔密度×気孔長は1穂籾数および収量と極めて密接な関係があり、全気孔長(=気孔密度×気孔長×葉面積)では更に密接な関係が得られた。このことから、気孔特性は(葉面積も含めて)1穂籾数を通じて収量と関連することが明らかとなった。 4.超多収品種密陽29号、水原258号の気孔数は止葉当り560-710万、その気孔長の総延長は73-87mに達し、ガス交換の窓口は品種日本晴の約3倍大きかった。
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