研究概要 |
本研究では、イネいもち病菌に対するキタジンP(IBP)の作用性を、菌叢とプロトプラストレベルで検討し、さらにプロトプラスト系が薬剤検定に利用できるか否かを併せて検討した。まず、プロトプラストの最適分離条件を定めた。つぎに、IBP感受性菌株の菌系から得たプロトプラストを5-10ppmIBPで処理し、IBPが壁再生と菌系復帰を阻害することを明らかにした。電子顕微鏡で観察したところ、IBP4ppmの2時間処理でプロトプラストの細胞質に異常が現われた。この異常が壁再生の阻害に結びつくと考えられた。プロトプラストの細胞膜は低濃度IBPでは影響されないが、50ppmで影響をうけることも明らかにされた。感受性菌株と耐性菌株のもつIBP耐性は、プロトプラストで検定してもほぼ平行的に現われた。また、プロトクローンの代を重ねても、菌株のもつIBP耐性は変動しないことも明らかにされた。上記の結果が、圃場から得られたIBP耐性菌株にもあてはまるか否かを検討したところ、菌叢のもつ耐性度はプロトプラスト系でも平行的に現われた。また、菌系伸長阻止作用をもたない抗いもち剤トリシクラゾール,ピロキロンでプロトプラストを処理しても壁再生,菌系復帰は抑制されなかった。以上の結果から、プロトプラスト系でみる限り、IBPは4-10ppmの低濃度では主に壁合成,菌系復帰を阻害し、50ppmの高濃度では細胞膜に影響を及ぼすことが明らかにされた。菌叢とプロトプラスト系のIBP耐性は、圃場耐性菌株でも平行的に現われること及びプロトプラスト系は菌叢よりも薬剤に鋭敏に反応することから、プロトプラスト系は薬剤検定に有効に利用できると考えられる。また、逆に、菌株の薬剤耐性度検定にも利用できる可能性は高い。
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