研究概要 |
エタノールをバイオマスから醗酵生産することは,潜在的な石油資源の不足の時代を迎えて重要な意義をもっている. 他方,エタノールの生産はこれまで酵母に依存してきたが,エネルギー資源としてのエタノールを生産するためには,エタノール生産性の高いZymomonas細菌(Z菌)が酵母よりも有利と考えられる. 申請者は,これまでZ菌の菌株改良を研究してきたが,Z菌の遺伝生化学的知見が乏しいため,育種方法も限定され,研究の発展を阻害してきた. 本研究は,遺伝子組換え技術を用いるZ菌の育種に必要な遺伝生化学的基礎知見を得ようとするものである. 最終年度にあたる62年度に実施した研究の内容を要約すると,次の通りである. 1.61年度の研究において分離したZ菌のプロモーターDNA断片(329bp)の塩基配列を決定するとともに,プロモーター域の転写開始点をSiヌクレアーゼマッピング法を用いて決定した. 2.分離したZ菌のプロモーター下流に,大腸菌由来のラクトース醗酵性やガラクトース醗酵性やラフィノース醗酵性遺伝子を挿入し,Z菌内でのこれら遺伝子の発現を検討した. ラクトース醗醗性遺伝子はZ菌内で充分に発現したが,他の遺伝子の発現は微弱であった. これは,Z菌のプロモーターに原因があるのではなく,挿入した遺伝子に問題があると推定している. 3.大腸菌のラクトース醗酵性遺伝子を導入したZ菌のグルコース生育菌体は,ラクトースのグルコース部分を醗酵してエタノールを生成した. さらに,酪業廃棄物ホエーからもエタノールを生成することを初めて明らかにした. 他方,大腸菌由来のガラクトース醗酵性遺伝子を導入したZ菌も,微量ながらガラクトースからエタノールを生成した.
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