研究概要 |
皆伐一斉林の幼齢林小流域で, 枝打ちおよび施肥が流出養分量に及ぼす影響を調査した. 流出養分量は流出水量に大きく影響を与えることから, 流出水量を著しく多くする若齢林での一度の多量の枝打ちは地力の面からもさけねばならない. A. 層の最も少ない時期に適度な枝打ちで土壌へ有機物を供給することは地力の面からも重要である. また閉鎖後の樹冠下部のある程度の枝打ちは蒸散量にはあまり影響ないものと考察した. 土壌水の養分特性を把握するため, ポーラス・カップをとりつけた吸引法による簡易採水器を試作し, 採取した土壌水に含まれる養分の特性ならびに林地での斜面位置別での土壌水に含まれる養分の動態や同一斜面での深さ別あるいはトラバース状に採取した土壌水中の養分変動および流域からの流出養分量との関係について考察した. 採水器で採取された土壌水は降水にともなって容易に移動する土壌水である. 窒素の施用で土壌水のNo_3-Nを増加させた場合, 土壌水の電気的等量を保つため, 置換性Ca,CaやKが土壌水に溶出される. その溶出割合は土壌の置換性塩基割合と関係がある. 〓粒状構造の発達している斜面下部では, 施用要素のNo_3NやKの下層への移動は容易で, それにともなってCaやMgの移動も多い. 一方, 斜面上部では施用された養分要素は普通の降水ではあまり下層へ移動せず, より強い力で吸着されている土壌水に含まれる. 降水にともなって下層へ移動する土壌水に比較してPF4.2までに含まれる土壌水の養分量は多く, 特に表層で非常に多い. 80cm層になると, CaやMgでは土壌水とほぼ同程度になる. ha当りの養分量も多く, 降水が多い時に増加し, 渇水期になると減少する. 枝打ちや施肥による林内雨や樹冠流の養分量の変化やイオン交換樹脂による土壌中の養分移動量については現在とりまとめ中である.
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