研究概要 |
本研究では魚類感染症診断の血清学的手法に不可欠な高力価で特異性の高い抗血清を得る方法として, 最近確立された細胞融合法によるモノクローン抗体産生技術を取り入れ, 特異生の高いモノクローン抗体産生技術を確立し得られたモノクローン抗体の魚類感染症研究やその診断への応用を目的とした. (1)先ずIPNV(VR-299)で免疫したマウスの脾臓細胞とマススミエローマを融合させ, 最終的に良好なハイブリドーマ1株を得た. 産生するモノクローナル抗体(C-1)はサブクラスが1gG1であり, かつ中和能も有した. 蛍光抗体法及び酵素抗体法では特に腹水抗体が極めて高い力価を示し, 加えてポリクローナル抗体使用時に見られる非特異的な反応が全くみられないことから極めて有効な抗体であることを明らかにした. (2)IPNV20株および他の魚類病原ウイルスを対象に, coagglutination testおよび蛍光抗体法を用いてc-1抗体の特異性を検討した結果, 供試したIPNVはBuh1株を除きすべて反応陽性となった. しかし他の魚類病原ウイルスは両方法ともに陰性であった. (3)C-1モノクローナル抗体はIPNVに共通して見られるβポリペプチドを抗原として認識していることを明らかにした. (4)C-1モノクローナル抗体のIPN迅速診断への応用の可能性を検討した結果, coagglutination testによる病魚材料中のIPNV抗原の直接検出が可能であり, また感度もかなり高いことが明らかになった. (5)A.salmonicidaに対して6株のハイブリドーマ, R.salmoninarumに対して4株のハイブリドーマを得たがいずれも継代2-3回で抗体産生能を消失し, この点は今後の課題となった. (6)サケ科魚類の病原ウイルスIHNVおよびヒラメのラブドウイルス感染症原因ウイルスHRVに対するモノクローナル抗体産生ハクブリドーマの樹立も試みたが, ともに樹立には至らなかった.
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