研究概要 |
昭和60年および61年どにおいて我々が製作したコンピューター制御下の顕微操作システムでは, マイクロマニピュレーターの作動部に, 位置のセンサーが組み込まれているので, 複雑な顕微操作がかなり正確に行い得ることが判った. 本年度においては, このシステムに更に改良を加え, 顕微操作がより自動化する目的で画像処理システムが導入された. 同時に新しいタイプのマイクロマニピュレーターも採用した. 用いられた画像処理システムは, マイクロツール:保定用ピペットの位置, 及び手術部位を自動的に検出し得るものである. TVカメラから送信された画像は, フレームメモリーにより情報化され, 必要に応じてコンピューターから位置検出の情報がとり出され得るようにした. 新しい操作用マニピュレーターは, ピエゾを駆動源とした油圧伝達式のものを試作した. 他にシリコン油の液面差を利用した保定用マニピュレーターも製作して用いた. 上記2つのマニピュレーターと画像処理システムを採用し, 雄性前核への微量注入, 未受精卵の卵囲腔への精子注入桑実胚の側方からの切断などが試みられ, いずれにおいても手術部位が正確に検出され, 操作が円滑に行われた. 本研究において開発されたコンピューター制御下の顕微操作システムは, 哺乳動物初期胚に対する種々の顕微操作に効果的に用いることができることが実証された. また, 改良の経過に伴ない, 手動では困難と思われる複雑な顕微操作も, このシステムにより可能となった. この事は, コンピューター制御のマニピュレーションシステムが発生工学的手法として利用する事に対して大きなポテンシャリティを有することを示唆している. 今後, 画像処理時間をより短縮し, 各種の顕微操作に応じて, 手術部位検出の為のソフトを開発していくことで, このシステムは, さらに汎用性を持つに至るものと考えられる.
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