1.周産牛末梢リンパ球のIgG産生能は、分娩後10日以内に最低となり、分娩後40日までに分娩前20日のレベルに回復した。さらに、完全な回復には分娩後60日を必要とした。周産牛末梢血リンパ球と空胎乾乳牛non-B細胞とを混合培養した場合、周産牛末梢リンパ球のみを培養した場合と同様に、分娩後10日以内にIgG産生の低下がみられた。また、分娩後40日以内では、空胎乾乳牛non-B細胞との混合培養を行なった場合の周産牛末梢リンパ球のIgG産生増強は弱く、これの完全な回復には分娩後60日を要した。空胎乾乳牛末梢リンパ球と周産牛non-B細胞とを混合培養した場合、分娩後30日以内の周産牛non-B細胞ではIgG産生増強作用が比較的小さかったが、分娩後60日における該増強作用は、空胎乾乳牛のレベルにまで回復した。以上の成績から、周産期乳牛ではIgG産生能が低下し、このIgG産生能の低下は、B細胞及びnon-B細胞の両者の機能低下に基づいていることが明らかになった。 2.新生子牛末梢血リンパ球のPWM刺激による抗体産生は、成牛末梢血リンパ球のそれの3%以下であった。また新生子牛T細胞は成牛末梢血リンパ球の抗体産生を抑制したが、新生子牛B細胞は成牛T細胞のヘルパー能によって抗体を産生した。これらのことから新生子牛T細胞のサプレッサー活性によって、その末梢血リンパ球の抗体産生能が抑制されていることが判明した。PWMによって誘導される新生子牛T細胞のサプレッサー活性は加齢に伴って減少し、50日齢で消減した。子牛末梢血リンパ球のPWM刺激による抗体産生能は成長に伴って増加したが、サプレッサー活性の消減した50日齢においても成牛のそれの約40%であった。以上の成績から、哺乳期子牛の免疫応答不全には、T細胞の発現するサプレッサー活性が関与していることが明らかにされた。
|