研究概要 |
同じ平滑筋でありながら、動脈平滑筋は、例えば、動脈硬化に見られるような種々の反応変化を示すのに、消化管平滑筋は比較的に恒常性を保っている。このような差異がどのような形態学的基盤にもとづくかを明らかにするために、透過及び走査電子顕微鏡を用いて研究した結果、次のどのようなことがわかった。 1.動脈及び靜脈平滑筋など血管平滑筋細胞と、腸管平滑筋細胞との間には、その微細構造において、基本的には差がない。しかし、細胞間基質は血管平滑筋において豊富で、線維成分も著しく多い。このことは、腸管平滑筋細胞にギャップ結合が高頻度に見られ、その大きさも大きいことと深く関連しているように思われる。 2.ビタミンD投与ラットにおいて、血管透過性の高い大動脈や心冠状動脈では、中膜平滑筋の幼若化,内膜への遊走,中膜平滑筋細胞の局所壌死などの変化が認められ、これに伴う血管壁の再構築が見られる。しかし、透過性の低い胸底動脈では、中膜平滑筋にほとんど変化は見られない。この差異は、ビタミンDによる高カルシウム血症の発来と共に、カルシウムの内膜への透過の程度に依存しているように思われる。他方、透過性の高い靜脈では平滑筋細胞の反応は極めて弱い。この点は、腸管平滑筋細胞によく似ている。動脈平滑筋細胞と靜脈のそれとの間に反応性の差があるとすれば、構造上にも何等かの差があるはずである。この点、今後解明すべきものと考える。 3.凍結割断レプリカによる観察では、血管平滑筋細飽と腸管平滑筋細胞の細胞膜の間に鑑別し得る差は認められない。今後は、細胞膜の膜内粒子の生理学的性質解明のため、免疫電顕法をも加味し、細胞膜に局在するレセプターの解明を試みていきたい。
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