研究概要 |
投与されたアミノ酸の体内分布と代謝の経時的変化及び臓器特異性を明らかにする為に, マウスに^<14>C標識アミノ酸の静脈注射を行い, 一定時間後(5,30,60,180分)の体内分布を酸処理及び未処理全身切片のオートラジオグラフィーにより追究した. オートラジオグラフィー黒化度測定にドラムスキャナーを用い臓器内分布の詳細を知ることができた. 他の一群では注射後, 1,5,10,30分に主要臓器を剔出し, 酸可溶性, 酸不溶性, 脂質画分に分画し, 酸可溶性画分には高速液体クロマトグラフィーを, 酸不溶性画分にはSDSゲル電気泳動法あるいはゲル濾過法を行った. 対象としたアミノ酸は生理活性アミンの前駆体でもあるチロシン, トリプトファン, ヒスチジン, アルギニン及びロイシン(分岐鎖アミノ酸)とGABA(蛋白質非構成アミノ酸)である. 全身オートラジオグラフィーにより, 5つの蛋白質構成アミノ酸の体内分布は投与後5分で膵の放射能が最も高く, 肝, 腎, 消化管, 唾液腺が比較的高く, 脳, 精巣が低く, 時間と共に酸不溶性物質への取り込み率が高くなるなど共通のパターンを示した. しかし臓器の黒化度の経時的変化は個々のアミノ酸により多少異なった. 一方GABAはこのパターンを示さなかった. 主要臓器の酸可溶性画分の高速液体クロマトグラフィーにより臓器で検出された放射性代謝産物及びその量比には臓器による差違が認められ, アミノ酸代謝の臓器特異性を示唆する結果を得た. 酸不溶性画分(蛋白質画分)の分析の結果, 放射性物質を取り込んだ蛋白質の分子量にはちがいがないことが明らかになった. 以上のように6つのアミノ酸代謝の動態に関する知見が得られたが, アミノ酸代謝産物あるいは他のアミノ酸の体内分布やアミノ酸代謝の臓器相関性など解明すべき問題を提起している.
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